十牛図というマッピング

/wp/wp-content/themes/aio-theme十牛図というマッピング

さて、今日は十牛図について。ところで、皆さん十牛図ってご存知でしょうか?禅の入門図として室町時代に中国から伝わった十枚の図案なのですが、内容としては牧人が逃げ出した牛を探し求め、飼いならし、やがて姿を消していく過程を示したものとなっています。比喩的に「牧人=真の自己を求めるもの」「牛=真の自己」として描かれていて、禅の修行によって高まっていく心境を10段階で示したものです。私がこの図を知ったのは、もう10年も前に、たまたま人に以下の本を進められたからなのですが…

なんとなく、この図が好きで、本の内容は覚えていないものの、記憶には残っていて。最近インフォグラフィックやダイヤグラムに対しての興味が深まっているので、「そういえば…」という感じで、古い本棚から引っ張り出してきました。

実際の十牛図

実際の図としては、こんな感じです。

1) 尋牛

2) 見跡

3) 見牛

4) 得牛

5) 牧牛

6) 騎牛帰家

7) 忘牛存人

8) 人牛倶忘

9) 返本還源

10) 入鄽垂手

個人的には第六図〜第九図の展開が非常に好きで、牛の上に乗った後に、図から牛がいなくなり、第八図では全くの空白になり(ここ!刺激的!)、返本還源の第九図にて自然が戻ってくるという…う〜ん奥が深い…ちょっとマニアックな楽しみかもしれません(笑)。

十牛図もデザインを通した情報手段

で、なんで今日は十牛図を取り上げたかというと、ただ好きというだけではなく、これも考えてみたら、制作におけるカスタマージャーニーマップやエクスペリエンスマップ、ダイヤグラムやインフォグラフィックと通じるものがあると思ったからです。デザインを通して、情報の伝達を、より豊かにしようという点においては同じだと言えるのではないでしょうか。

目的が違う。だから形が違う。

情報を伝えるという意味では同じでも、目的が大きく違うので、当然デザインが変わってきます。ビジネスにおけるビジュアライズの目的は、より早く、正しく、ユーザーの理解を得るために使用されることが多いのに対して、十牛図は理解よりも、禅の修行を深めるのが目的があるために、何を表現しているのか、わかるようでわからないという隙間や揺らぎがあって、解釈が幾通りにもできるようになっています。ビジネスにおいては、見る人によって、解釈が異なるような図を用いたら、しこたま怒られる可能性もありますが、十牛図においては、そちらのほうが都合が良いわけです。

目的を明確に。創造は大胆に。

情報を伝達する上で、やはり「目的」を明確にすることは重要だと思います。ただ、目的が定まったのであれば、それをどう表現していくのかということ自体は大胆に自由に行きたい。そんな風に思います。そうすることで新たな発見があると思うし、表現に触発されて目的自体が変化していくこと(良い意味で)も十分にあると思うのです。十牛図の10の豊かな図案に触発されて、今日はそんなことを思いました。