100行書きたい 2020年篇

100行書きたい。

長篇小説を書きたい。

雨の日の喫茶店で読書がしたい。

そのお店は武蔵野珈琲店がいい。

よいエスプレッソマシーンを買いたい。

デザインカプチーノの練習をしたい。

珈琲豆を炒ってみたい。

一日中空想をしたい。

背広のままで空を飛びたい。

遠くへ行きたい。

 

免許を取ってみたい。

数か月間、海外で仕事をしたい。

読書会を開きたい。

演劇はなるべく多く観に行きたい。

帝国劇場に行きたい。

オペラなんかも観てみたい。

とびきりおいしいごはんを食べに行きたい。

そのときは、大切な人と一緒にいたい。

ごはんを食べて、おいしかったね、と話がしたい。

遠くへ行きたい。

登山に行きたい。

山に登って、おいしい空気を吸いたい。

そのときは、大きなリュックサックを背負っていきたい。

暮れていく夕日に想いを馳せたい。

夜は火を見ていたい。

火を見て、もの悲しい気持ちになったりもしたい。

そのときは、あの人のことを思い出したい。

朝日なんかも見てみたい。

世界がびっくりするくらい広いと再確認したい。

遠くへ行きたい。

 

一生懸命仕事がしたい。

新しいこともたくさん覚えたい。

感受性を大事にしたい。

知識と教養を育みたい。

こつこつと、大事なものを丁寧に積み上げていきたい。

たくさんの人と出会いたい。

喧嘩をして、仲直りがしたい。

叶えたい、理想のことについて語りたい。

理想がどうやったら叶うかたくさん考えたい。

遠くへ行きたい。

よい人間を育てたい。

たくさん褒めて、たくさん言い聞かせたい。

知識と教養と礼節を大切にしたい。

そうして、よい人間ができあがったらよい。

よい人間が、またたくさんのよい人間を育んだらよい。

そのために、自分もよい人間でありたい。

よい人間であるために、どうしたらよいかよくよく考えたい。

たくさんの人から学びたい。

そうして、優しさのようなものがたくさん増えたらよい。

遠くへ行きたい。

 

100行書きたい。

社員旅行に行きたい。

行先は沖縄がよい。

白い雲と、青い海が見たい。

その晩はたくさんお酒を酌み交わしたい。

ふだん話せないいろいろなことを話したい。

話して、次の日には忘れていたい。

そのまま透明ななにかで包んでおきたい。

でも、ふとしたときにときどき取り出して眺めたい。

遠くへ行きたい。

春には花見をしたい。

桜の木の下で、とびっきりのお酒を飲みたい。

夏は花火をしたい。

火を囲んで、あのコと静かに語りたい。

秋は月見をしたい。

誰かと月を見るのは特別なことだと感じたい。

冬は、鍋を囲みたい。

あたたかい鍋の、やわらかい幸せの味を感じたい。

過ぎ去っていく時間を感じていたい。

遠くへいきたい。

 

100冊の本を読みたい。

100句の短歌や俳句を読みたい。

100編の詩を読みたい。

100曲の歌を聴きたい。

100本を映画を見て、

100作の演劇を観たい。

100種類のお酒を飲んで、

100人の美しい横顔を見たい。

100行を書く速度で、

遠くへいきたい。

立派な会社をつくりたい。

関わる人や社会が幸せになればよい。

たくさん仕事をして、

たくさんお金をかせいで、

ちいさくても立派なオフィスを構えたい。

仕事の合間には井之頭公園で散歩をしたい。

人に好かれる会社がよい。

そこには、随一的で信頼できる仲間がいてほしい。

怠けず、あきらめず、丁寧な人たちがよい。

遠くへいきたい。

 

遠くへ行きたい。

遠くへ行きたい。

遠くへ行けるのは天才だけだ、といったのは誰の言葉だったか。

買える分だけの切符を買って列車に飛び乗っても、

ただお尻が痛くなるばかりで、ちっとも遠くへ行けやしない。

遠くへ行きたい。

遠くへ行きたい。

どこよりも遠くに、何よりも高くに行けるのは、

それは想像力の翼だけだ。

100行書きたい。

 

100行分の想像力で、わたしは遠くへ行ってしまいたい。